EIKOH HOSOE
ALMOSTBLACK

細江英公(1933-)は、日本の代表する写真家のひとりであり、人間を主題に作品を作り続けてきた。ALMOSTBLACKの2022AW-2023SSコレクションは、前シーズンでの白髪一雄・富士子に続き、細江英公とのコラボレーションとなっている。 細江は、自らが用いる写真という手段について「写真は関係の芸術である」と述べ、一貫して人間の身体(Human Body)に向き合ってきた。2022AWでコラボレーションした『おとこと女』(1961年)や、三島由紀夫を被写体とした『薔薇刑』(1963年)そして2023SSシーズンの『抱擁』(1971年)などで写真における身体表現を展開し、劇場による身体の表現は、それぞれの作品で微妙にニュアンスが異なる。 例えば『おとこと女』は、身体と社会を日常的な視線でとらえた記録的な性質が強いが、『薔薇刑』では三島由紀夫の鍛え上げられた肉体を眼前に、ゴムチューブなどの小道具を使用し耽美な世界を構築している。しかし『抱擁』は、その2作とは異なり、抱擁する肉体の温かさもあろうような身体同士の出会いを描いており、写真の質感もそれまでの強いコントラストから、皮膚の白と黒を表現するための豊かなグレーの階調へと変わっている。 2022AWコレクションでは、インクジェット・プリントと、シルクスクリーン、そしてジャガード織りを使用して、細江英公のゼラチン・シルバー・プリントを表現。トリミングを行うことなく、そして、作品キャプション(タイトル、制作年、制作方法)も合わせて表記している。 パンツやニット、シャツなどにプリントされた「Body Drama」というテーマは、デザイナーの中嶋にインスピレーションを与えた、細江の『おとこと女』、そして『抱擁』シリーズをまとめた写真集「Human Body」のフォントを踏襲している。 2023SSコレクションでは、作品イメージのプリントやTシャツのように衣服を支持体として用いるだけでなく、コレクション全体として作品から影響を受け、そのエッセンスを衣服で表現を行った。『抱擁』のエッセンスとも言える肉体の境界線としての皮膚が作り出す筆線の線を衣服のデザインに落とし込んでいる。 ALMOSTBLACKの定番とも言えるミリタリーテイストでありながらも身体にフィットするデザインも、細江の写真における身体表現を受けたクリエイションと言え、さらに徹底したモノトーンの色展開も、作品と洋服と身体を三位一体とするためのパターンを強調している。






