SOFU TESHIGAHARA
ALMOSTBLACK

2023秋冬シーズン、2024春夏シーズンにてALMOSTBLACKとコラボレーションした勅使河原蒼風(1900-1979)はいけばな草月流の創始者であり、数々の斬新な表現を生み出したことから「花のピカソ」の異名を持つ。樹塊を用いた巨大な作品や、花を用いない立体作品、そしてコラージュ絵画などの多くの作品を作り、それぞれで多彩な手法を実践した。 コレクションでは、蒼風の作品をプリントやパッチで衣服のうえに表現したものと、デザイナー中嶋峻太が蒼風にインスピレーションを受けて生み出されたオリジナルの表現がある。プリントで使用された作品には、鋭利な触手が今にも動き出しそうな「樹獣」、木を真っ二つに割ったような「虚像」シリーズから、特に鮮やかな色彩が印象的な「KYOZO」、コラージュ作品「エッフェル塔」があり、これらのバラエティに富んだ作品群から、蒼風がいけばなの道を拡張した総合芸術家であったことが窺い知れる。 多作な蒼風だが、花器や立体作品、そして樹塊に開けられた丸い穴は彼を特徴付けるアイコニックな表現と言ってよい。空虚で不気味なこの穴は、鋭利で危険ささえ漂わせる立体作品や、冷たさを感じさせる鉄の作品などでも見ることができる。そしてこの穴が、ALMOSTBLACKの今期のコレクションではパンク・ファッションのディティールという必然を伴って衣服のなかに現れている。さらに今シーズンは、ステンレス鋳物の工場である株式会社ヤナギモトの協力のもと、蒼風のオブジェにインスパイアされたブローチを制作。このブローチ自体、ステンレスの冷たさを持っているが、磨き切らないことで生まれるやわらかい光沢で、今期のコレクションの相反性を象徴している。 蒼風は「花が美しいからといって、いけばなのどれもが美しいとは限らない」という言葉も残している。これはALMOSTBLACKが継続してきたアーティストとの取り組みにも言い換えることができる。コラボレートするアーティストの作品がいくら美しいからといって、そのコラボレーションが美しいとは限らない。いかに説得性と正当性をもったコラボレーションなのか。この問いに、クリエーションで応えることこそ、ALMOSTBLACKがアーティストとコラボレーションを行う理由とも言える。




